えすぷれっそ

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 好き、好き、好き。  いつだって鐘は鳴ってた。激しく抱き締めて欲しい。その香りだけ知りたくて仕方なかったの。  唇重ねて君にどっぷりはまりたい。  でも、こんな醜いあたしを、なんであんたは間違えたんだろう。  あんなにいつもクールで、黙って、とことんまで。  例えるんならそう、美しい彫刻のような男。  間宮、あんたって堅物だけどでも――あんたがあんなに愛に飢えてたなんて知らなかった。いつだって無敵だなんて勝手に思い込んでた。強くて、鋼みたいな奴だって。だからこそあの子を好きになったのも納得する。  間宮は何でも出来るし、容姿端麗でギターも歌もうまくて。あんたが描いた絵のデザインが歯みがき粉のパッケージで売ってたりとかさ。釣りも、旅行も、なんか何故か詳しくて。凄いよね。  間宮、あんたの和食はそんじょそこらの主婦の味を越えちゃってる。電話の時だけ何故か声がすこしエロく感じる。言い尽くせない、あんたは本当に凄い。惚れない理由は無い。  でも、一番の理由は、二年前の再会。ゆめの家に遊びに行った時。そこにあんたは居た。 「お前、神谷カナだろ。渋谷中学の時美術部だった」  ――びっくり、した。  中学の時、体重76キロもあったあのあたしと、今のあたしを間宮は見間違えなかった。  モデルにスカウトされるくらい、死ぬ程ダイエットして。自分磨きして。デブでネクラだった過去を消したかった。とても他人には言えないくらい恥ずかしい過去だから。大嫌いな消極的な自分なんてって。いつも心で罵倒して。  だから、デブなあたしを覚えていた間宮に最初は嫌悪感を抱いた。避けたかった。知らないでいて欲しかった。けど、でも 「神谷さんの絵、いつも見てたから」  最初の出会いは、中三の間宮と、中一のあたし。
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