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本当に驚いた。いつも放課後、美術室の裏にある準備室で間宮は先生に指導を受けながら入試の為の油絵やデッサンを描いていて。
美術室では美術部がワイワイ楽しく活動してた。
そんな美術部の女の子たちはみんなが間宮を好きだった。間宮の絵も、真剣な眼差しも透き通るような喋り声も、毎日見る背中に黒い眼鏡、キリッとした顔立ちも全て。
オタクでネクラのあたし達には、特別な王子様で。
いつも遅くまで残って作業する間宮の時間に、あたし達も自然と合わせるようになってて。片付けを手伝うのが取り合いで、もう大変だった。
中一から中三の春まで、生徒会とバスケ部を掛け持ちでやっていた間宮の絵の才能にずっと目をつけていた美術部の顧問は、スポーツ推薦や都内の名門校からの誘いの話を蹴らせ。間宮を美大に行かせるために必死になって口説いた。
間宮の性格上、あんなに尽くして困った顔を見せたり、何度も何度も頼まれて、――なんて。そんなの断れなかったんだろう。間宮は優しいから、自分を求める人に決して冷たくはしない。それに、彼はきっとどんな世界でも生きていける。
だって北極で生まれて、そこで捨てられた奇跡の命なんだから。
誰かは間宮を不幸だと言うかも知れない。
どんなに頑張って自分を高めたって、きつく抱き締めてよくやったなと褒める親などどこにも居ないのだから。
でもだからこそ彼は、どんな事があったって負けないんだろう。だって、強いんだよ。誰よりも強いんだよ。仲間がいつだって支えているし何より――間宮の恋する愛するあの女神みたいな女の子は、間宮と仲間達と同居するルームメイト。そして私の、大親友だ。
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