えすぷれっそ

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 あたしなんて、真っ黒な日本人形みたいな重たい髪してるし。染めたいけど、のびるのはやいからすぐにプリンになっちゃうからなー。それにたまに受ける舞台の仕事で、最近やけに黒髪の役が多いから。中々染めるチャンスがない。茶色にしたらゆめとかぶるから、なんか気持ち的にやだし。金が似合うような顔立ちでもないしな。 「いいなあ。黒髪ー」 「ん?」  ゆめはそのふんわりとした茶の髪を両手でくしゅくしゅさせながら羨ましそうにあたしの事を見つめた。 「カナちゃんみたいなしっとりしたストレートの黒髪って憧れる! 仲間由紀恵みたいで」 「結構手入れ大変なのよ。美容院月に三回もトリートメントしに行ってるんだから。まあ事務所には週に一回は最低でも行けって言われてるんだけど。撮りの前以外にもよ? 他にもエステにヨガに水泳に、この年になって再び幼少期並に習い事通わされるとは思わなかった」 「ふーん、良いよねえでも。モデルさんは美容院代も何もかも会社から出てさー。エステ行きたいなあ~」 「こないだ一緒に行ったでしょ。先月も二回行ったし」 「んー。しかしカナちゃんさ、家でも結構自分でお手入れしてるよね? 努力の艶だね~」 「なーんて言ってるけど、実は美容院は最近男目当てなの」 「えーっ?! うそっ」 「美容院のお兄さんが、間宮に似てて。眼鏡もかけてるし。背は全然低いけど、誠実で癒されるの」 「にゃるほど。間宮くんに髪を触られてる気分を味わっている訳にゃのですな?」 「そっ、そんなんじゃ」 「間宮くんにこないだ髪洗って貰った時、結構上手だったよーっ。今度会ったら頼んでみれば? 生カリスマ間宮もオススメですよーっ! なんちゃって」 「は? ゆ、ゆめ、間宮とお風呂に入ったの!?」 「え、違う違うっ。ほら、こないだ両手に熱湯かぶっちゃって火傷したって言ったでしょ? お風呂入って髪洗うの手痛いから辛いのって言ったら、洗ってくれたの」 「キイイ羨ましい! こんの馬鹿ゆめっ!」 「あー。ご、ごめんー」 「そんなもんあのチビ妃か辰賀に頼みなさいよ! それに元はと言えばゆめが両手火傷する程ドジなのが悪いんじゃない!」 「そうです。その通り。今後気を付けます」 「それに間宮は、あたしの頼みなんて聞いてくれないわよ。こっちが酷い事したと思い込んで避けられてるんだから」
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