ロミオとシンデレラ

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「おやすみ、裕翔。」 「おやすみなさい。パパ、ママ。」 …おやすみなさい。早く寝てしまえばいい。 大人なんか…。 パフッ 音を立てて、ベッドに座った。 今日の夜空は、とてもきれいに星が輝いていた。 …もうすぐ、来てくれる…。 時刻は、10時24分。 体が、異様に熱くなる。 コンコンッ バルコニーのドアが音をたてた。 その瞬間、一気に明るくなる表情。 少し駆け足で、ドアまで駆け寄った。 キィィィィーッ 音をたてて、ドアは開いた。 少し冷たい夜風が、僕の頬をかすめた。 開いた向こうには、愛しい人。 「涼介ッ…!」 「ふふふ、走ると転ぶよ。」 彼は、優しい笑顔をしながら、優しく抱きしめてくれた。 彼の着ている、白いカッターシャツからは、噎せ返るような、ほろ苦いようで甘いキャラメルの香りがした。 僕は、そんな彼の服からする香りが大好きだ。 「会いたかった…ッ…。」 「俺も…。」 そう言うと彼は、ポンポンと、僕の頭を撫でた。 白いベッドの上にまるで、陶器の食器でも扱うかのように、優しく押し倒された。 ―…今日はどこまでいけるの…? 「…噛みつかないで…優しくして…。」 消えそうな声で呟いた。 だって、まだ苦いものは苦手なんだもん。 きっと、ママに甘やかされ続けたからだろうね。 けど、今だけは良いよね? 明日からは、ちゃんといい子になるよ。だから、今は許して…―  
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