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そして、数日後の今日、薮は火葬された…。
綺麗な青空が広がる中、火葬場では白い煙が空へと上っていた。
「光くん…。」
振り返れば、目を真っ赤にした山田が裕翔の頭を撫でながら、俺を呼んだ。
「ん?どうした?」
「…光くん、本当に…本当にごめんなさい…。俺達光くんに最低なことをした…。」
「…薮だろ?」
「…えっ?」
「薮に口止めされたんだろ?」
少しの間、沈黙が続く。
すると、山田は決心した様に言った。
「…うん。薮くん自分が病気で弱っていく惨めな姿を、光くんに見せたくなかった…何より、心配させたくなかったんだって…。だから薮くん、光くんと別れたんだ…。」
【惨めな姿】って…。
俺がそんな風に思うかよッ…。
山田は、話しを続けた。
「それに本当は薮くん、光くんの事こっぴどく酷い事言おうと思ったんだって…けどッ……『やっぱ、ダメだった。光に、大っ嫌いとか他に好きな人出来たとか、言えなかった』って…。」
「山田…、もう良いよ。」
「後…これ。」
そう言って、山田は俺に白い一枚の封筒を渡した。
中央には、"光へ"と綺麗な文字で書かれていた。
「薮くんから、光くんにって預かってた手紙…。」
封筒を開き、手紙の内容を読んだ。
薮の綺麗な字で記されていた。
ー…数分後。
「ハハハッ薮らしいや!」
俺の乾いた笑い声が、満点の青空に響き渡った。
END
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