天井

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俺は部活から帰ってきてベッドの上にダイブした。 ここは落ち着く。 ふわふわしていて、今日あったこと全てを忘れることができる。 ふと、上を見た。 そこにはいつもと変わらない天井があった。 手を天井に向かって伸ばしてみた。 天井に届きそうか気がしたからだ。 壁と同じ真っ白な天井。 小さい頃、天井に触ってみたくてよくジャンプしていた記憶がある。 今となっては触りたいという思いを忘れていた。 まだ、人生で1度も天井を触ったことがない。 「触ってみたい。」 気付いたら天井を見て思ったことを口にしていた。 「久しぶりにやってみるか。」 ベッドの上で立ち。 思いっきりジャンプをした。 「あと少しなのに…」 届かなかった。 自分の身長を認めたくなかった。 バスケ部だから届くと思ったんだ。 ジャンプでは無理なようだ。 なぜか、今日はどうしても触りたがった。 世界中で初めて自室の天井に手が届く人間になりたかったんだ。 机の上に椅子を置いて、その上に立った。 今まで努力してきたジャンプという手段は捨てた。 今はどうしても触りたかったんだ。 …。 だがそれでも届かなかった。 自分の身長の低さに泣けてくる。 椅子の上からジャンプしたら届いたであろう。 しかし、そんなことはしない。 そのあと、こけて怪我することは目に見えている。 そこまで馬鹿ではないからそんなことはしない。 部屋を見回した… そしてベッドの下に手を伸ばし、隠されていた大量の山のようにつまれている男の宝の本を椅子の上に積み重ね始めた。 椅子の上に立てそうになかったので、踏み台用にも積み上げた。 別に違うものでも良かったんだが、その上に立ってみたかったんだ。 ほらっわかるだろ!? 宝の山の上に立てるんだぜ。 なんか気持ち良さそうだろ!? 机の上のエ○本の上に立った。 そして、そっと手を伸ばした。 「つ、ついに天井に触ったぞ!宝の上で!世界で初めて!!」 急にひどい虚しさに襲われた。 ……。 降りようとしたとき、 ガタッ 「うわーー!」 転倒した。 後頭部が痛かった。 部屋中に宝が散らかった。 そのとき… 母「ごはんできたわよー。」 ガチャ 母さんが部屋の扉を開けた。
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