1202人が本棚に入れています
本棚に追加
/226ページ
「ママの初恋?えっ?いくつの時?」
「いくつ…だったかな…
おじさん、まだ居る?」
「ウン、ずぅーっと…こっち見てる…」
「そっか…どんな顔してる?」
「えっ?顔?猿に似てる………」
「やだぁ、乃愛ったら
そうじゃなくて 笑ってるとか 泣いてるとか 怒ってるとか…
表情………けど…猿………って…」
私はクスクス笑った。
(冬馬…乃愛から見たら アナタの顔…猿顔に見えるみたい…
そういえば…今 思い出したら 猿に似てたかも…
冬馬…今…どんな思いで 私達を見てるのかな…
冬馬…こんなに近くにいるのに
アナタが見えない…
こんなに近くにいるのに
アナタの声も聞けない…
冬馬…)
「おじさん…ん~?難しい表情…笑ってないし…泣いてもしてないし…」
(冬馬…アナタも困惑してるよね…こんな姿 見せたら…
アナタを困らす為に
会いに来たんじゃない…
乃愛…大きくなったでしょ…
でも…もう、これが最後になるかも…
目が見えてたら 会いに来れるけど
やっぱり…目が不自由だと…大変…
冬馬、しっかり乃愛を見といてね…)
私は心の中で呟いた。
「乃愛…じゃあ…ニッコリが無理なら おじさんに会釈して…」
私は見えてないが
冬馬に向かってニッコリ微笑んだ。
「あっ、私 今…頭 下げたら おじさんも
頭 下げたよ…やっぱり…おじさん、ママの初恋の人かも…」
「そうかもね…乃愛、そろそろ帰ろうか…」
「えっ?帰っちゃうの?
おじさんに…声かけたら…」
「いいの…もう帰ろう…」
「でも…何か、おじさん…寂しそう…
このまま帰っちゃうの…可哀想…」
「いいから…
人違いだったら困るし…
それに…何て話したら良いかわからないし…
話さなくても ママの思い出は消えないから
このまま帰ろう…」
私は向きを変えた。
最初のコメントを投稿しよう!