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「ママ…ちょっと、トイレに行ってくるから
ここで待ってて…」
「あっ、ウン…」
目が 見えなくなると
耳が異常な程 発達してるようで 誰かが走ってくるような音が聞こえた。
肩をポンポンと叩かれた。
「こんな所て1人で立ってたら ナンパされるよ…」
「冬馬…………」
その声は冬馬だと分かった。
(えっ?何?いきなりそんな ふざけた言い方?
目の事とかじゃないんだ…)
「乃愛、しっかりしてるな…」
「乃愛…?」
「俺とこに いきなり来て…私の母…目が見えないんです…
私 トイレに行きたいので 母 1人じゃ心配なので 私がトイレから戻るまで おじさん
母の側で少し居て貰えませんか?って…
本当、ビックリしたよ…」
「あの子…気を遣ったのかも…」
「目…見えんようになってたんやな…
不自由だろ…」
私はコクりと頷いた。
「あっ…それで…
目も見えないし 今日も来るの大変で…
ごめんなさい…約束は…今日で…」
「俺が 勝手に来るのは 自由だろ
雪乃…俺は…約束…
いつか…守れるように頑張るよ…」
(えっ?約束…守るって…?
一緒になる事?
何 言ってるの…
もう…私…目が見えないのに…)
冬馬の言葉に 動揺する私だった。
冬馬が突然 私の手を握り
「俺は…今でも 雪乃の事…愛してる
目が見えなくても
雪乃は雪乃…」
「冬馬………」
(冬馬は優しいから
そんな言葉で励ましてくれてるに違いない)
そう思いながら ニッコリ微笑んだ。
「すいません…
ママ、お待たせ…」
乃愛は私の耳元で小さく呟いた。
「少しは話せた?」
「乃愛…」
(でも…今…間近で3人…居るのよね…
乃愛…ありがとう)
目が見えなくても
冬馬との約束が 夢で終わっても
見えない絆が 今 結ばれてる事に
私は嬉しく思っていた。
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