~運命~

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まだ雪の残って肌寒い昼下がり、兼豊が家に着くと赤ん坊の声が、すぐ聞こえてきた。 「お藤(ふじ)!生まれのか!」 お藤(兼続の母)は布団の上で赤ん坊を抱きかかえていた。 「はい、元気な男の子です。」 兼豊は、赤ん坊を受け取ると、優しく丁寧に顔を触った。 「お藤よ!名を決めたぞ!」 輝いた顔で兼豊は言った。 「名は、与六が良い。樋口与六兼続じゃ!」 名を聞くと微笑み、そして頷いた。 「与六!大きくなったら輝虎(てるとら、後の上杉謙信)様、みたいな立派な男になるんじゃぞ。」 兼豊は、そんな期待を持ち、与六を天高く持ち上げた。
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