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「ごめん、有理ちゃん。今何にも考えたくない」
私は卑怯だった。
真っ直ぐ向き合おうとする有理ちゃんから、私は背を向けて歩き出す。
有理ちゃんが私に、辞めないでください!、と言った声が追いかけてくるのを、振り切るようにビルから出た。
「…さむ」
ビルから出た瞬間、乾燥した風が私に吹き付ける。
もう3月だというのに、風は冬のように冷たかった。
***
いつものように電車に乗って帰ってきて、マンションのエレベーターに、乗り込んだところで大事な事を思い出す。
(…お母さんになんて言おう)
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