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その人は私をじっと見つめると、ふいに、あ、と思い出したように呟いた。
「fiveの子だ」
ね?と同意を求めた彼をうまく見られなかった。社長の言葉がまた頭をよぎる。
『あなたにはグループを辞めてもらう』
「あれ、違った?入り口に貼ってあったポスターで、前に見た気がしたけど…」
僕普段男性アイドル部門にいるから女の子には疎いんだよね。
そう言って笑ってみせた男性にチクリ、と心が痛む。
「…もう違うんです」
もう、私はfiveじゃない。
口に出してみると、その事実が自分の中で一気に現実味を増した。
それと同時に、どうしようもなく寂しくて、逃げるようにエレベーターに乗り込む。
ドアが閉まる際に見えた、その人は何故だか私に、よろしく、と口を動かせてみせた。
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