あの日

2/2
前へ
/7ページ
次へ
平和。 なんてステキな言葉なんだろう。 平らで和やか。 そんな風に過ごせるって、幸せなことなんだと思う。 けれど、現実はそう、甘く出来てはいない。 理不尽はいつも、避けようとして歩いている時に限って、こっちに向かって降ってくる。 きっと、あの日僕に降ってきた「理不尽」も、避け難い必然だったのだろう。 そして僕は、「理不尽」を受け入れた。 止まっていた歯車は、音を立てて回り出す。 噛み合ってすらいない、錆付いた歯車。 空転する歯車は、何にも害されることなく回り続ける。 そのかわり、何かに影響することはない。 そんな、ひとりぼっちの、歯車。 僕はここで、空転するだけの物語を歩み始める。 どこまで行っても、ひとりぼっちなんだろうけど。 でも、それでも。 どうしても、そんな日々が、 欲しくてならなかった。 ―カチリ。 歯車の回る音。 今、聞こえた。 これから、始まるんだ。 ここから、取り戻すんだ。 "既に終わっていた物語"を。 準備は出来ている。 行くぞ。 僕は、震える足を奮い立たせ、 一歩を踏み出した。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加