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「で?研究って何?」
「気になる?じゃあ俺にチューしてくれたら教えてあげるよ?」
「じゃあ聞かない。もう帰る。」
私はさっきの一言で一気に冷めた。
噴水の研究?バカバカしい。何を調べるっていうの?
私はノートを学生鞄にしまいその場を立ち去ろうとした。
「美沙ッ!」
叔母さん以外でその呼び方をする人は誰もいなかった。
でもこの声は叔母さんじゃない・・・。
「離して。邪魔。」
握られた手を振り解いた。
「君は噴水の研究をバカバカしいと思ったね?その言葉、忘れんなよ・・・。」
低く、穏やかな声でそう告げた。
「この噴水にはとても神秘的なことが起こるんだ。」
こんな所で何が起こるっていうのよ。
「不思議なこと。・・・さぁ、こっちに来て・・・」
私に手を差し出してくる。
「ここのタイルに君は乗って。俺はこっちに乗るから。」
一体何が起こるの?こんな場所で。
私は怖くなって目をつぶった。手を強く握った。
「俺もはっきりどうなるかは分からない。」
私は少し辺りの空気が寒くなったのを感じた。
噴水の水でもかかったのかと目を開けた。
そこは噴水の前ではなかった。
二人の間を風が吹き抜ける。私は手を離した。
「ちょっと!どこよ、ここ。」
私は携帯で電話しようとした。
「繋がらないよ。過去に戻ってるんだから。」
!!?
「そういう説明くらいしてよ!?」
「だって何も聞かなかったから・・・」
最ッ低!どうやって戻るの?!
「戻り方は分からない。でも必ず出られるはずだから。」
「そっか、心が読めるんだった・・・。」
「裏の声を聞かれるのは嫌?」
「ううん、慣れてないだけ。」
「慣れてたら怖ぇよ。」
私は不安で指が震えた。
「俺の研究によるとここは過去だから本来の世界に戻っても時間は進んでないらしいよ。」
それを聞いて少し安心した。叔母さんに迷惑はかけられない。
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