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五月も中頃ともなれば、朝の気温も暑くもない寒くもないって感じで……だいぶ起床が楽になる。
……って、熱かろうが寒かろうが、やっぱ眠いものは眠いんだし?
そんな一般論的なものは、俺にはあまり関係の無い話かな。
寝起きに頭がボーッとするのは今に始まった事では無いけれど、いつにも増して今日のそれが酷いのは……。
昨日の夜、ちょっと羽目を外しすぎたからかも。
「……葵?」
「ん? あぁ……百花、おはよ。まだ寝てても良いよ?」
「……ん」
と、いつもの事ながら寝癖の付いているであろう髪をワシワシと掻き、眠気を追い出す為に欠伸をする俺の横。
正確には斜め下からかかる声にそちらを見やると、もうすっかり見慣れた愛しい顔がこちらを見上げていて。
その上目遣いと少し寝ぼけたような口調が、俺をまた彼女の元に引きずり込もうとする。
あー……いかんいかん。
さすがに今からだと……仕事遅れちゃうよなぁ。
馨ちゃん遅刻には本気でうるさいしなぁ……。
頭の中で天秤にかけた百花への欲望と、とても口には出せない馨ちゃんの……。
残念ながら軍配が上がったのは馨ちゃんの方だった。
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