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小気味のいいキーを回したときのエンジン音が鳴り響く。しかし、エンジンがかからない。
「あっ……。やばいかも……」
何度も試すが、かからない。
「どうかした?」
「バッテリーが上がって、エンストした」
話しながらもエンジンやギアを動かしているが、いっこうにかからない。完全に上がってしまったらしい。
「ねぇ、とりあえず隣が縁石無いし、駐車場あるから、時間無いし手で動かそう。私、後ろの人に言ってくる」
瞳は、車を降りた。それから、私と龍も降り、最後に真矢も諦めて車を降りてきた。
「俺も、前の人とかに言ってくるよ」
龍が走り出したのとすれ違いで、瞳が戻ってきた。
真矢は、ショックからなのか項垂れている。
「私がハンドル動かすから、男二人は車押して。由希は浴衣汚すといけないし、誘導お願いね」
瞳が笑って見せた顔は、心配するなと言っているようだった。彼女は、強い。
それから、龍が戻ってきた。
二人で車を動かし始め、由希が指示を出す。
「大丈夫ですか?手伝います」
花火大会の帰りなのか、出店の商品を持っていた女性二人組みが声をかけてくれた。
それをきっかけに、車に乗っていた若い男性から女性、子供までも集り、みんなで車を押す。乗り鳴れた人の誘導もあり、なんとか駐車場に車を入れることが出来た。
「ありがとうございました」
四人で、頭を下げる。
「じゃ、俺は仕方がないので、保険に電話をします」
相変わらずに項垂れた真矢が、ダッシュボードから契約証などを出して電話を始める。
その間に三人は、親に電話をするなりしていた。
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