晴天の霹靂 2

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これ以上話してても無駄、というより、話すこともないと思い、鞄を手にして立ち去ろうとする。 「帰っちゃうの? 凛々ちゃん」 「話すこともないですから。 さようなら」 「嘘だ。 聞きたいくせに」 その言葉に、私は足を止めて振り返った。 「…なにを…?」 オレンジの夕日を背に受けて、向上先生の茶色の髪が透けて見える。 逆光が目に刺さり、私は思わず顔をしかめた。 ――ぐいっ! 「!!」 次の瞬間、気付けば向上先生は私の腕を掴み、引っ張るように歩き出した。 「…い、いたいっ」 抗議を口にするも、どんどん進んでいく向上先生のスピードについて行けずに、足がもつれる。 倒れそうになる反動で、いつの間にか目の前まで迫っていた白いコンクリートの壁に手をつくと、そのまま体を返されて、背中にひやりと冷たい感触が伝わった。 「…な、……」 後ろには、壁。 そして私を囲うようにして壁に手をついている向上先生が、笑っている。 夕日を遮り、私に影を落としながら。 「…な、にする…」 「聞きたいんだろ?」 向上先生の茶色の目が、眼鏡の奥で細められる。 「なんで、加賀高雄がダメなのか。 …好きになっても、報われないのか」 「…っ」 無意識に盾にしていた、胸の前で抱えた鞄を握る手に、ぎりっ…と力が入る。 「あんたと加賀の恋には、…未来がない。 どんなに好きになっても、…泣くだけだ」 .
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