晴天の霹靂 2

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「…なにを、…知ってるんですか…」 やっと搾り出せた弱々しい声に、向上先生は妖艶な笑みを浮かべる。 「あんたが俺のものになったら、教えてやってもいいよ」 「……ふ、ふざけないで…」 「ふざけてなんかない。 …言ったろ? あんたが気に入ったって」 「…そんなこと言って…。 本当は、何も知らないんじゃないですか…?」 「……」 この人のペースに飲まれちゃ、いけない。 高雄は私を傷つけることは、絶対にしないんだから。 「…高雄に、…恋人がいることなら、…知ってる…。 だけどそれを、あなたにとやかく言われる筋合い…」 「恋人だって?」 睨みつけながら言った私の言葉は、向上先生の笑いの混じった声に遮られた。 頬に添えられた手は、するりと私の後頭部に回される。 「…これだから、お嬢様は。 好きな奴に恋人がいるくらいで泣ける恋愛なんて、可愛らしいもんだよ。 …現実は、漫画や小説よりも複雑で、…残酷だ」 「……」 気が付けば、鼻が掠れそうなくらい近づいていた向上先生の顔。 避けないとダメだと分かっているのに、動くことができない。 向上先生の呪文のような吐息が、…私の唇にかかる。 「俺が知ってるのは、 …加賀と、あんたの母親の罪だ」 ――目眩がした。 そして次の瞬間には、 唇が重なっていた。 .
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