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翌日。
私は朝から憂鬱だった。
「……」
「お嬢」
「…なに」
「…うまい?」
「…うまいよ」
「……」
もくもくと朝食を口に運ぶ私のそんな様子を、高雄が見逃すわけがなく、向かいに座り、頬杖をつきながら私を観察している。
その視線から早く逃げたくて、おみそ汁を飲み干してから箸を置いた。
「ごちそうさま」
「ご飯残ってるけど?」
「お腹いっぱいなの」
「……。…お嬢」
「……準備、してくる」
呆れたようなため息を後ろに聞きながら、私はさっさと部屋に戻った。
……高雄の顔が、見れない。
力なくベッドに腰を下ろすと、昨日のことを思い出す。
…向上先生に、キス、された…。
あのあと、先生の胸を思い切り突き飛ばして、無我夢中で逃げるように走って帰った。
『俺が知ってるのは、加賀と、あんたの母親の罪だ』
向上先生の声が、頭にこびりついて離れない。
……罪って、なんなの?
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