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さすがに学校までは一緒に行けないから、近くの公園で私は車を降りた。
「お嬢」
ウィンドウを下げ、高雄が顔を覗かせる。
「別に言えないことがあるなら、それはいい。
けど、して欲しいことがあったら、ちゃんと言えよ」
「……」
「お嬢に頼られたら弱いの、知ってるだろ」
片眉を上げてニッと笑うと、高雄は車を発進させた。
それをぼんやりと見送りながら、高雄は、どうしてこんなにも私に優しいのかが不思議でならなかった。
…今までは、それが普通だったのに。
向上先生が言った、『罪』という言葉が、私の胸にずっしりと影を落としていた。
「不用心だね。
こんな場所まで一緒に登校するなんて」
重たい足を一歩踏み出そうとしたとき、後ろからの声にびくんと体を揺らした。
「おはよう、凛々ちゃん」
「……向上、先生…」
振り向くと、そこには今一番遇いたくない人が立っていた。
相変わらず軽そうな、だけど完璧な笑顔で。
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