木曜日の憂鬱

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本鐘が鳴る直前に教室に戻ると、すでに教壇には峰岸先生が名簿を手にして立っていた。 「おはよう、生田さん。 …今日はなんだかギリギリなのね」 「……あ、…えっと…」 別に怒られている訳じゃないのに挙動不審に目を泳がせる私に、峰岸先生は不思議そうな首を傾げる。 ふわふわのウェーブヘアが揺れ、鼻を掠める程度の甘い香りに、先日の光景が嫌でもフラッシュバックしてしまった。 ――高雄と二人、楽しそうに笑い合う姿を。 「…え、と。 お腹、痛くて…」 「えっ、大丈夫?」 「い、いえっ! 大したことないですから」 適当な理由で誤魔化しただけなのに本気で心配する峰岸先生に苦笑いしながら、そそくさと席についた。 前の席の恵那が、口パクで「嘘つきー」と笑っている。 「過保護な家守は、何の用事だったの?」 そして席に座るやいなや、恵那はニヤニヤしながら声を潜めて聞いてきた。 「…分かって聞いてるでしょ。 ……さっきの騒ぎのことだよ」 「やっぱりねー。 家帰って聞けばいいのに、拐ってまで問い詰めるなんて。 よっぽど心配なのね、凛々のことが」 「……そうみたい」 「まあ、相手があの軽そうな向上だったから、余計になんだろうけど」
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