木曜日の憂鬱

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どこまでも楽しそうな恵那に口を尖らせていると、本鐘が鳴った。 「はい、静かに。 出席取るわよー」 峰岸先生がホームルームを始めるのを見て、高雄と寄り添う姿がまたフラッシュバックしてしまう。 …共通の知人がいる、って言ってたっけ。 それだけなのにあんなに親密そうに見えたのは、私が子供だからなのかな。 だったら、…恋人と一緒にいるときの高雄って、どんな感じなんだろう。 「……」 自分で考えたことに、ずーんとショックを受けていると、ふと、向上先生の言葉を思い出した。 『好きな人に恋人がいるくらいで泣ける恋なんて、可愛いもんだよ』 …馬鹿にしてる。 自分が一番になれないって分かっている恋が、悲しくないはずない。 それ以上に悲しい恋なんて……。 「……ね、恵那」 声を潜め、肩をツンツンと叩くと、恵那は「ん?」と振り返った。 「好きな人に恋人がいる以上に、悲しくて、どうにもならない恋って、ある?」 「は??」 「しーっ、声、大きいっ」 「だって。 なに、その質問」 本気で目を真ん丸くする恵那に苦笑いを浮かべる。 「……と、友達、がね? ツライ恋をしてるみたいで…」 「凛々に相談するとか、勇気あるねー、その友達」 「……ちょっと」 「ははは。 冗談だって」 睨んでみたものの、そんなの鼻にもかけない恵那は前を向いて「うーん」と首を捻る。 「そうねぇ…。 禁断の恋…、とか?」
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