それはまるで刻印のような。

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“大和撫子”が聞いて呆れるような、肉食系の話題を耳に流しつつ席に着く。 そのまましばらく呆けていると、ツンツン、と肩を叩かれた。 「あ、美鈴」 「おはよう、凛々」 笑顔で挨拶を交わして、美鈴は隣の席に座った。 そして盛り上がっている女の子たちに視線をやり、愉しそうに目配せをする。 「みんな加賀先生と向上先生に色めきたってんね」 「え? …あー…。 ……みんな、好きだよねぇ」 「ね、凛々はどっち派?」 「断然、加賀先生」 きっぱりと言い切ると、美鈴はキョトンと目を丸くする。 「…どした?」 「……や、意外だなーと思って。 てっきり、凛々は向上先生だと」 「……なんでよ」 抗議を込めて低い声で言うと、美鈴は肩をすくめて笑った。 「…今朝、実は見ちゃって。 校門での騒ぎ」 「! …美鈴にまで見られてたんだ…」 「うん。 なんか、派手にやってたから…。 ……どういう関係なのかな、なんて思っちゃった」 「あー、なんもないの。 ただ、前にパーティーで顔合わせてて。 それだけ。 あの軽いカンジが癪に触って、今朝は爆発しちゃったけど」 向上先生の話しなんてこれ以上膨らませたくなくて、笑顔を作って早口で一気に言った。 「……。 ふーん、そうなんだ」 「それより美鈴、さっきうちのクラス来たんでしょ? 何か用事あったの?」
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