彼と私の関係

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「凛々ちゃーん!久しぶり!」 放課後。 学校の近くの喫茶店に着くと、こちらに手を振る藤沢くんともう一人知らない男の人が座っていた。 ちら、と、恵那を見ると、私に気付いて首を横に振る。 …恵那も初めて会う人かぁ、なんだか緊張する。 小学校からエスカレーター式で、ずっと女子高だった私と違って、恵那は高校からの編入だから男友達の幅が広い。 藤沢くんも、最初は恵那がコンパで知り合った大学生だし。 全く同世代の男の子と接点のない私を心配して、みんなで遊ぶ時は誘ってくれるけど、 恵那も知らない男の人と会うのは、これが初めてだ。 とりあえず、藤沢くんの向かいに座ると、さっとメニューを渡してくれる。 「なんでも好きなの頼んで。 あ、こいつ、洋介(ヨウスケ)ね。恵那と凛々ちゃん」 藤沢くんの紹介に、軽く会釈をすると、洋介さんは愛嬌のある笑顔を返してくれる。 ピアスが開いてたり、赤っぽい髪の毛の色が、なんだか恐い印象だったけど、纏う雰囲気は意外と穏やか。 「よろしく、凛々ちゃん」 「…よろしくお願いします。」 初めて聞いた声も、低くてよく響いて、どことなく弾む感じ。 まるで、歌うように話す人だった。 すぐにお目当てのフルーツタルトと紅茶が運ばれて来て、それを頬張りながら、何気ない会話を楽しむ。 といっても、藤沢くんが喋り倒して、それにツッコミを入れる恵那でほぼ成り立っているんだけど。 それでも、『男友達』に縁のない私には、こういう場は新鮮で楽しい。
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