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「心配ごと?」
高雄に顔を覗き込まれて、ハッとした。
いつものようにリビングで宿題を広げたものの、上の空になっていたみたいだ。
「……うん。 ちょっと。
…美鈴、早退してたみたいだから、大丈夫かなって」
ふぅ、と溜め息をついた。
授業が終わるとすぐに逃げるように教室を出て行った美鈴が気になって、放課後、美鈴のクラスまで出向いていった。
だけど、そこには既に美鈴の姿はなくて。
“何だか青ざめた顔をしてて、すぐに早退したみたいだよ”、とクラスの人に聞いて、私の胸はざわついていた。
「美鈴って、…綾部さんのことだよな?
なに、…ケンカでもしたの」
「違うよ。 そういう訳じゃ、ないんだけど…」
私の不安が伝染したように、高雄も困った表情をした。
この胸のモヤモヤをここで吐き出せたら、いくらか気持ちは軽くなるのにな、と思ったときだった。
高雄の携帯の着信音が、部屋に響いた。
ディスプレイを確認した高雄の顔が、一瞬、険しいものになる。
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