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斜め向かいの洋介さんを、ちらりと伺う。
ブラックのコーヒーを啜りながら黙々とパフェを口に運ぶ姿が、なんとも不似合いで、じーっ、と見ていると、不意に目が合ってしまった。
「…食べる?」
「は?」
抑揚のない問い掛けに、一瞬ボケてしまった。
「見てたから。パフェ食べたい?」
「あ、いや…」
表情を変えずに淡々と話す洋介さんに、しどろもどろになって答える。
「なんか、珍しくて。
…男の人が甘いもの食べてる姿って」
「すっげぇ甘党なの、顔に似合わず」
「…」
思ってたことを見透かされたようで、返事に困る。
そんな私を見て、ふっ、と笑う洋介さん。
「美味いケーキ屋とか知ってたら教えて、凛々ちゃん」
そう言って、また手元に視線を戻した。
…掴み所のない人。
口数は少ないけど、むすっとしてる訳じゃなく、ちゃんと笑顔で藤沢くんに相槌を入れたり、私や恵那に気を使ってくれてる。
だけど、自分の話しをしたり、私たちのことを詮索するわけでもない。
藤沢くんに予め聞いてるからかも知れないけど、今まで遊んだ男の子達は、必要以上に聞いたり話しかけたりしてきたから、なんだか逆に気になってしまう。
「…駅前のメゾン・ピエール」
「ん?」
「ケーキ屋さん。
小さいから解りづらいけど、あそこのチーズケーキとイチゴショートは絶品だよ」
最初はきょとんとした顔をしてた洋介さんは、すぐに表情を和らげた。
「じゃ、今度買いに行く」
「うん。感想聞かせてね」
ふと、視線を感じる。
「もー、凛々ってば。
…席変わろうか?」
「洋介なんて連れてくるんじゃなかった…」
ニヤニヤ顔で袖を突く恵那と、…ショックを受けたようにうなだれる藤沢くん。
…な、なんなの?
洋介さんは「アホか」と藤沢くんを小突いて、コーヒーを飲み干した。
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