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弾かれたように、洋介さんを見る。
「…そんな顔してる? 私…」
「うん…」
そのまま立ちすくむ私を、洋介さんはクッションに座るよう促した。
ぺたり、と腰を下ろす。
私の斜め前に胡座をかいて座った洋介がペットボトルのレモンティーを差し出して、それを受け取りながら私は、眉を下げて笑った。
「高雄にバレるのは分かるけど、まさか洋介さんにまで分かっちゃうなんて」
「隠し事が出来ないタイプだ」
「……それ、キライな先生にも言われた」
「ははは」
今朝、向上先生にも言われたけど、私は自分で思っているより、顔に出てしまうタイプなのだろうか。
むー…、と口を尖らせて、ペットボトルの蓋を空ける。
「……友達のことで、ちょっと」
「ケンカとか?」
「そうじゃなくて、……」
続きを濁そうとして、はた、と思う。
洋介さんになら。
…美鈴とは全く関係ない洋介さんになら、胸のモヤモヤを聞いてもらえるかも……。
1人で不安を抱えるのが限界だった私は、おずおずと口を開いた。
「歯形のアザ、ねぇ…」
私が話し終えると、洋介さんは息をついてコーヒーを飲んだ。
「いい?
嫌だったら遠慮なく言って」
「え? あ、ううん」
そして少し険しい顔つきで、煙草をくわえて火をつける。
ふー、と白い煙を吐く横顔が、知らない大人の男に見えてドキリとした。
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