決められた道は、壊したくなる。

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「え、…冗談、でしょ?」 「まさか。 本気だよ。 普段が冷静沈着だから、怒ると特にいい」 さらりと言ってのける洋介さん。 ――『加賀さんて、怒った顔がそそるよね』 前に洋介さんが言っていた意味不明な言葉が、ガツンと頭に落ちて来た。 ……マジで? よ、洋介さんて、洋介さんて……。 「……ホ、ホ、」 「ホモじゃないよ。 一応」 ショックの余りフクロウのような私を見ながら、肩を竦める洋介さん。 「正確には、バイなんだ。 男でも女でも、好きになるのに性別はい問わない。 ま、ただ、さすがに相手が男の場合はプラトニックな感じが強いから、心配しないで」 「し、心配って……」 「寝とったりしないから、安心してね。 凛々ちゃん」 「……」 にーっこりと、なんだか怖いくらい素敵な洋介さんの笑顔。 ……もう、言葉もありません。 でも、…ああ、そうか…。 どうして洋介さんに対して、こんなに警戒心がないのか、分かった気がする…。 本能的に、その必要がないんだと、悟っていたのかも……。 未だ放心状態の私を横目で笑い、洋介さんは、 「驚かせたお詫びに、何か弾くよ。 リクエストは?」 「………お任せします…」 「了解」 そして、綺麗な旋律を奏で始める。 その音楽は、本当に子守唄みたいで。 ……衝撃的な一日のせいでパンク状態だった私は、すぐに眠気に誘われてしまった。 .
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