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――ヤバいっ!
朝、目が覚めてすぐにそう思った。
ガバッと起き上がって周りを見ると、純和室に不似合いな電子ピアノ。
それから、慣れない煙草の匂いと、畳の上でクッションを枕にして横たわる背中。
……寝ちゃった。 洋介さんの部屋で。
多分、ピアノを聴きながら寝てしまった私にベットを譲り、洋介さんは床で寝たんだろう。
自分の失態に頭を抱えながらも時計を確認すると、まだ6時前。
…高雄はいつも7時くらいまでは帰らないから、今戻ればバレずに済む…。
前に洋介さんを離れに入れたことに怒っていたから、故意じゃなかったとしても、この状況を知られたらまずい。
今のうちに自分の部屋に戻って、昨日は離れから出なかったことにしておけば…。
……とりあえず、洋介さんを起こしてベットで寝てもらわないと。
てか、その前に謝らなくちゃ。
そんなことを考えながらベットから下り、洋介さんの肩に手を置こうとした時だった。
「辰巳! 入るぞ!」
ろくなノックもなく、苛立ちを含んだ声と共に、いきなりドアが開かれる。
そこには、……いるはずのない高雄が、険しい顔をして立っていた。
「…た、っ高雄…っ!?」
思わず叫んだ私の声で、洋介さんが身じろぎをする。
そしてすぐに目を覚ました洋介さんは、
「…おはよう、凛々ちゃん。
……あれ? 加賀さん…?
こんな朝早く、どうかしましたか?」
呑気なことを言いながら、むっくりと身体を起こした。
その全く焦りのない様子に、高雄の眉間のシワが、ググッと深くなる。
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