羊の皮を被ったオオカミ男

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それを見た洋介さんは、ああ、と状況を理解したようだった。 「すみません、加賀さん。 …朝まで、お嬢さんをお借りしちゃって」 「!!」 洋介さん、…それは…。 明らかに高雄を煽ってるでしょうっ!?? 高雄の怒った顔がツボだと言う昨日のカミングアウトのおかげで、洋介さんの悪気のなさそうな言動も、確信犯だと分かってしまう。 アワアワと高雄を見ると、彼は思った通り、怒りのオーラを露にしていた。 「あ、あの、高雄…」 「……お嬢、戻るぞ」 「ちょっ……、いたっ」 ズカズカと部屋に入ってきた高雄に二の腕を掴まれて、無理矢理立ち上がらせられた。 そしてそのまま、まるで荷物のように、ひょいと肩に担がれる。 「ひっ…、た、高雄っ! こわいっ!! 下ろしてっっ」 「暴れると落ちるから。 じっとしとけ」 低く凄みのある声でピシャリと言われ、抵抗は無理だと悟った私は、高雄の背中の服をギュッと握った。 「お嬢さんとは身の上話しをしてるうちに眠ってしまっただけですよ。 …なにもありませんから、一応」 そのまま出て行こうとする私達に、洋介さんが付け加える。 高雄がジロリと、洋介さんを睨んだ。 「…当たり前だ。 お前なんかに手を出されるようには教育してないんだよ」 「そうですかね。 お嬢さん、スキだらけでしたよ?」 「……辰巳」 「はい」 「…今後、お嬢に対してそういう目を向けたら、叩き出すだけじゃ済まないぞ」 「…重々、承知してますよ」 相変わらず穏やかな笑顔で話す洋介さんと、返事をするたびどんどん声が低くなっていく高雄。 ……ああ、洋介さん。 お願いだから、これ以上喋らないで……。 まるで「朝からいいもの見れた」と鼻唄まで歌い出しそうなくらいの洋介さんは、高雄に担がれる私に、ヒラヒラと手を振って、 「また相談事があったら、いつでもおいで。 凛々ちゃん」 と、最後に爽やかに笑った。 ――ピキ、と。 高雄から血管が切れた音がした、……気がした。 .
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