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恵那の声に、はっと我に返る。
「ごめん!高雄が迎えに来るから、行くね。
恵那は?乗ってく?」
「や、あたしは藤沢に送ってもらうから…」
「そっか、ホント、急にごめん!」
忙しなく荷物をまとめて話す私に、向かいに座る二人は状況が把握出来ずに目をパチパチさせている。
「え、彼氏?」
恐る恐る聞いたのは藤沢くん。
「違う違う。
うちの家守なんだけど…」
家守、なんて分かんないか。
この業界特有のものだし。
案の定、藤沢くんは首傾げて?マークを浮かべている。
「…家守?」
「うん。詳しくは恵那に聞いて。
じゃあ、ごちそうさま!」
洋介さんが何故か『家守』に反応した気がするけど、説明は恵那に丸投げして慌てて店を出る。
私がいなくなった後、残された三人はこんなやり取りをしていた。
「あーあ、行っちゃった。まあ、藤沢は負けだね」
「あー、凛々ちゃん…
やっぱ脈ないよなぁ」
「脈があった所で、凛々は無理よ。
なんてったって、『彼』っていう高ーい壁があるんだから」
「彼?」
「家守の『高雄』、よ」
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