彼女の居場所

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本当に風邪をひいて寝込んでるのかも知れない。 でも、…美鈴本人から学校に連絡があったということは……。 「……」 私は階段を降りてすぐにあった、空き教室に入った。 電話帳を開き、【美鈴】から【綾部】にスクロールする。 …私からの連絡を避けるのは分かるけど…。 だけどやっぱり、声を聞かないと安心できないじゃない。 本人から連絡があったなら、美鈴は、家にいるということだ。 幼馴染みだから、お互いの自宅の番号は知ってる。 私は強行突破で、美鈴の自宅に発信した。 『はい、綾部でございます』 3コール目で、呼び出し音が途絶えた。 さすが綾部家。 電話すら相手を待たせないよう徹底されてる。 「あ、おはようございます。 私、生田凛々ですが……」 『ああ、凛々ちゃん。 お久しぶりですね、どうしました?』 柔らかくなった声に、ホッした。 多分、この声の主は、長く綾部家に出入りしているお手伝いさんで、私も何度か会ってる人だ。 「お久しぶりです。 ……あの、美鈴とかわって頂きたいんですが…」 『……美鈴お嬢さまとですか?』 「はい…。 あの、もし体調が優れないならいいんですが…、心配なんで声を聞きたいなって…」 『……凛々ちゃん、今学校ですか?』 「……? はい、そうですが…」 『お嬢さま、早退されたんですか? …まだこちらには戻ってませんが…』 「……え?」 何を言ってるのか、お互いがよく分からなかった。 そして、しばらくポカンとして黙ってしまった私の耳に、電話口から信じられない言葉が聞こえた。 『美鈴お嬢さまは、制服を着て、いつも通り学校へ行かれましたよ』 .
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