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にわかには、信じられない言葉だった。
『…凛々ちゃん?
お嬢様に何かあったんですか?』
黙ってしまった私を不審に思ったのか、電話口の声が少し硬くなる。
「…あ、えっと…。
た、多分、保健室にいるのかも…っ。
私ったら、早退したのかもなんて早とちり…。
と、とにかく、行ってみますねっ。 じゃあ、失礼しますっ」
我に返った私は、慌てて言い繕い、電話を切った。
そしてバクバクと鳴る心臓を治まらせるように、ふーーっと息をはく。
……どういうこと?
欠席の連絡は美鈴本人からあって、……だけど美鈴は、制服を着て家を出ている。
学校をサボるなんて高校生にはよくあることかも知れないけど、うちは言わずと知れたお嬢様学校だ。
清流学園の制服のまま街をうろつくなんて、バレたら退学になってもおかしくない。
なにより、あの美鈴がそんなことするなんて、考えられない。
「……どこ行っちゃったの、美鈴……」
不安に押しつぶされそうで、…泣きそうな声で呟いた。
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