彼女の居場所

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放課後。 しとしとと、雨が降りだしていた。 最近買ったお気に入りの傘を差し、その向こうに見える立派な日本家屋の門。 屋敷を囲む塀の奥に、背の高い黒松が列を作っている。 日本舞踊の総本家。 美鈴が跡取りになる家だ。 大通りから一本路地を入った場所に構えるその屋敷を見ながら、私は途方に暮れていた。 …どうしよう…。 頼りなく携帯を開く。 当然、美鈴からの連絡はない。 メールの返信がないどころか、彼女の携帯は、電源すら落とされていたんだ。 『今から家に行ってもいい?』という内容のメールを送信して、良くも悪くもアクションを期待していたのに、それも叶わない状況だった。 だから今、私は一人、雨の中で立ちすくんでいる。 …家に行って、もし美鈴が帰ってなかったら…。 今朝の電話のこともあり、どうしてもインターホンを押せずにいた。 そのまま30分ほど経っただろうか。 このままじゃらちが明かないと思い、とりあえず今日は諦めようかと、大通りの方に振り返ったときだった。 「……え……?」 薄暗く、グレーの景色の向こう。 こちらに向かって歩いてくる人影に、私は目を疑った。 .
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