彼と私の関係

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「学校に用があって1時間かかるんじゃなかったの?」 本当にぴったり10分で店に到着した高雄は、助手席に座って嫌味を言う私を、ちら、と横目に見る。 「お嬢に変な虫を付けるわけにはいかないからね」 「藤沢くんたちは、そんなんじゃないもん!」 「お嬢は男ってもんを知らな過ぎるんだよ」 …ムカつく。 否定出来ないところが。 不機嫌に黙り込んだ私に、高雄は小さく笑う。 「男はみんな狼。名言だね」 「…うるさい、狼」 目尻を崩して、堪えるように笑う高雄。 その顔で頭をポン、と撫でられると、これ以上…怒れない。 …でも、1時間かかるはずだった用事はどうしたんだろ? ふと、今朝の不思議に思った風景を思い出した。 高雄の仕事部屋に置かれていた冊子。 梅と桜の紋章、『清流学園』のシンボルが描かれていた。 「…学校に、なんの用事なの?」 改めて聞いてみると、一瞬間があった。 「そのうち、分かるよ」 にやっ、と、何かを企んでいるような高雄の顔。 こういう時は、問い詰めても教えてくれないのは、10年の付き合いだから解る。 「あっそ」 まあ、生田家は学園に出資しているから、私に関係ない用事があってもおかしくない。 なんて、軽く考えながら、窓の外を見つめた。 .
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