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「俺に言わせれば、あんただって同じだよ。
彼女の気持ちなんて、凛々ちゃんに分かるわけがない」
「…なっ…!?」
「好きでもどうしようもない恋が、それほど苦しいんだって分かるなら、――どうして、俺を選ばない」
「………」
向上先生と、一瞬。
ルームミラー越しに、視線が絡まった。
「加賀との恋に微かにでも期待をしてる凛々ちゃんに、分かるはずがないだろう。
俺を選んで、自分から離れようとはしないんだから」
――カチン、くらいじゃない。
腹立たしさで、泣きわめいてしまえるくらいだと思った。
「…そ、んなのっ、今は関係ない……」
「あるよ、大有りだ。
加賀との恋に未来はない、泣くだけだって、忠告したのに。
それでも、都合のいい俺にすがろうとしない。
本当の意味での絶望を、あんたはまだ知らない」
「……」
「それを味わわせるのが可哀想だから、俺にしとけって言ってんのに……。
そうだな、…いい機会だから、教えてあげる」
向上先生が、くすっと笑った。
「加賀が、あんたについてる嘘の、1つ目だ」
ぴん、と、人差し指を上にかざす。
「峰岸先生との、関係」
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