嘘つきなオオカミ

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高雄が手早くお風呂を沸かしてくれて、私はタプン、と湯船に口まで浸かった。 じわりと身体が暖まっていって、気持ちがほぐれていくのが分かる。 ……美鈴も、温まって少しは穏やかになれたかな……。 ぶくぶくぶくと空気の泡を見ながら、目を閉じた。 お風呂から出ると、ふわりといい香りがした。 ああ、これはアッサムだ、と思っていると、高雄が私に気付き、目を細める。 「ロイヤルミルクティーにしたけど、飲む?」 「……うん。 甘いのがいい」 「お嬢は甘党だね、相変わらず」 高雄は笑いながら、カップに綺麗な琥珀色の紅茶を注ぐ。 「部屋に持って行こうか?」 「…ううん。 ここで飲む」 「…そう。 じゃ、俺は仕事部屋に…」 「高雄もここにいて」 「………」 高雄がぱちぱちと目を瞬かせた。 無理もない。 あの日、――高雄が私に“男”を教え込んだ日から、私たちは出来る限り、二人きりにならないようにしていたから。 .
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