嘘つきなオオカミ

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別に、見るからによそよそしくなった訳じゃない。 ただ、今まで何気なくしてきた行動を、一瞬、考えるようになっただけ。 当たり前みたいにお互いの部屋を行き来しなくなったり、行っても、ドアから先には入らないようにしたり。 高雄なら当然のことを、他の誰かに置き換えて考えてみる、というか。 高雄が怖くなったとか、軽蔑したなんて気持ちは微塵もないけれど。 …こうして高雄を通して男の人を警戒や意識をするように仕向るのが高雄の目的だったことも、分かっているけれど。 「…嫌いなんじゃなかったの? 俺のこと」 「嫌いだよ」 「ははっ」 高雄は眉を下げて微笑みながら、言われた通りにテーブルを挟んで腰を下ろす。 そしてミルクティーを一口飲んで、「あまっ」と顔をしかめた。 その様子に小さく笑いつつ、私も紅茶に口をつけると、 「どうしたの?」 「え?」 高雄が、頬杖をついて私を見つめた。 .
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