嘘つきなオオカミ

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「なにが?」 「こうやって俺を呼び止めるなんて、久しぶりだろ。 一人でいたくないなんて、何かあったの」 「…誰も一人でいたくないなんて言ってないよ」 「言ってるようなもんだよ」 「……」 ズズ……、と紅茶を啜る。 いつもなら子ども扱いされてると怒りそうなとこなのに、黙っている私を、高雄は不思議そうに見ていた。 ミルクティーの温かさと甘さのお陰か、私はひどく穏やかに口を開く。 「……高雄にとって、私は、――なに?」 「……え?」 驚いた様子の高雄を、じっと見つめた。 「私は、高雄にとってどういう存在?」 「……お嬢、どうし…」 「答えて。 …茶化したりしたら許さないんだから」 「………」 高雄は少しだけ、表情を固くした。 「…大切な、守るべき存在だよ。 分かってると思ってたけど」 「なら、嘘はつかない?」 「お嬢を騙すようなことはしないよ。 悲しませることもね」 「そう。 ……じゃあ、聞くね」 コトン、と、手にしていたマグをテーブルに戻して。 そして、泣いてしまわないように、くっと唇に力を入れた。 「峰岸先生とは、ただの知り合いじゃ、ないでしょう……? …どうして、嘘をついたの…?」 .
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