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「……香り?」
「うん。 …高雄が泊まって帰る日は必ず、…甘い香りがするの」
「……」
「……それが、峰岸先生と同じだって、気付いて…、だから…」
そこまで言って、とうとう目を伏せてしまった。
こんなことを聞いて、問い詰めて。
一体、何になるんだろう。
多分、私は。
…高雄の恋人が峰岸先生だって、高雄自身から聞きたいんだ。
決定的に告げられたときに、自分がどんなにボロボロになるか想像も出来ないくせに。
それでも。
……それでも、高雄は私の拠り所なんだと、信じていたい。
傷付いたって、いい。
この恋は最初から、望みはないって分かってるから。
だったら、せめて。
私が高雄に対してそうであるように、高雄も、私に全てを晒して欲しい。
誰にも壊されない、執事的な彼と私の、確たる関係性。
それが欲しくて、足掻いているんだ。
「峰岸先生は妹なんかじゃなく、恋人、でしょう……?」
――だけど高雄は、ただ、薄く微笑んで。
「……俺には恋人なんて、いないよ」
なんて優しい声で。
この人はやっぱり、嘘をつく。
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