その恋の行方

6/14
前へ
/244ページ
次へ
「私服で化粧もして、すごく大人っぽかったけど、絶対、美鈴ちゃんだったの。 もしかしたら一緒にいるのはお父さんなのかも、とも思ったんだけど、…噂のこともあるし。 何より、凛々が心配してたから、気になって。 …藤沢を上手く誤魔化ながら、ちょっとだけつけたの」 「……」 「…そしたら、やっぱり、…親子って感じじゃなくて…」 「…なんで、そう思ったの…?」 「……それは…」 いつもは何でもポンポンと話す恵那の口が、ためらっている。 なんだか嫌な予感がして、――そしてそれは、大抵、悪いものほど的中してしまう。 「男が、美鈴ちゃんの肩を抱いてて……。 それから、……二人でホテル街に入って行ったから……」 「……嘘でしょう……?」 私の腑抜けた嘆きに、恵那は俯くだけだった。 「…そこから先は、…流石に藤沢と二人じゃ行けないから…。 変な雰囲気になるのもあれだし、引き返しちゃって……」 「……」 でもホテルに入ったかどうかまでは分かんないよ?と、恵那は慌てて付け加えたけど。 どうしたって、嫌な考えしか巡らなくて。 どうか、間違いでありますように――、と。 私はただ、祈ることしか出来なかった。
/244ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3613人が本棚に入れています
本棚に追加