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「私服で化粧もして、すごく大人っぽかったけど、絶対、美鈴ちゃんだったの。
もしかしたら一緒にいるのはお父さんなのかも、とも思ったんだけど、…噂のこともあるし。
何より、凛々が心配してたから、気になって。
…藤沢を上手く誤魔化ながら、ちょっとだけつけたの」
「……」
「…そしたら、やっぱり、…親子って感じじゃなくて…」
「…なんで、そう思ったの…?」
「……それは…」
いつもは何でもポンポンと話す恵那の口が、ためらっている。
なんだか嫌な予感がして、――そしてそれは、大抵、悪いものほど的中してしまう。
「男が、美鈴ちゃんの肩を抱いてて……。
それから、……二人でホテル街に入って行ったから……」
「……嘘でしょう……?」
私の腑抜けた嘆きに、恵那は俯くだけだった。
「…そこから先は、…流石に藤沢と二人じゃ行けないから…。
変な雰囲気になるのもあれだし、引き返しちゃって……」
「……」
でもホテルに入ったかどうかまでは分かんないよ?と、恵那は慌てて付け加えたけど。
どうしたって、嫌な考えしか巡らなくて。
どうか、間違いでありますように――、と。
私はただ、祈ることしか出来なかった。
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