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ふら、と、足から力が抜ける。
…美鈴、…本当に…?
ショックで、頭がガンガンする。
この写真は本物かどうかとか、そもそも、誰がこんなものを撮ったのかとか。
一瞬にして色んなことを考えながらも、これ以上この写真を人目に晒しちゃいけない、と、やけにハッキリと思った。
生徒たちの騒ぎを聞き付けて、職員室のドアからは先生たちが怪訝そうに顔を出している。
…早く、これを、外さなきゃ…。
だけどつま先がひんやりと冷えて、根を張ったみたいに動けない。
「……大丈夫?」
頭の上から向上先生の声が聞こえて、後ろから肩に手を置かれた。
多分、ふらついた私を支えてくれたんだろうと、思う。
私は、小さく頭を振って、
「……誰か、あれ、外して……」
と、独り言のように、小さく呟いた。
――瞬間。
「失礼しますね、お嬢様がた」
柔らかい声が聞こえて、顔を上げた。
生徒たちの好奇の眼差しを一点に集めていた場所が、ダークグレーのスーツの背中で隠されている。
……高雄……。
手早く写真を剥がした高雄は、振り返り、一瞬だけ私と目を合わせた。
安心感で気持ちが緩んで、じわっと目の奥が熱くなる。
「……お嬢様がた」
高雄は私の後ろに寄り添うように立つ向上先生に一度目をやり――、だけどすぐに、生徒たちに向き直る。
「今ご覧になったものは、あまり軽々しく噂など立てないようにして下さいね。
…清流学園のお嬢様の、モラルが問われますから」
生徒たちが、気まずそうに顔を伏せている。
……不幸中の幸い、かも知れない。
こんな写真が貼られたとはいえ、当の美鈴は学校を休んでいて。
――だって、この写真が例え本当のことであっても。
こんな風に人目に晒されたと美鈴が知ったら、きっと彼女は耐えられない。
……なのに……。
「……ど、して……」
視線の向こうにある影に、私は愕然とした。
「……美鈴……?」
「……」
下駄箱の影に隠れるように、……美鈴が、こっちを見て、立ち尽くしていた。
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