私を造る全てのものを、この手で。

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「それに、…誰があんな写真を張ったんだろう」 「……どういうこと?」 「朝、事務員さんが掲示板を確認したときには、何もなかったらしいんだ。 要するに、朝のホームルームの間に張り出されたことになる。 …清流学園は警備が厳しいからね。 部外者が侵入して、っていうのは、考えにくい」 「………」 じゃあ、あれを張ったのは。 学園の生徒か、…もしくは、教員…? どちらにしろ、恐ろしいことには違いないけれど……。 その犯人が誰なのか、その意図は何だったのか、なんて。 ……今の私には、考える余裕はなかった。 「…美鈴、…苦しい恋を、してたの…」 「……」 高雄が、私の前に座る。 私の目から、ポロッ……と涙が零れた。 「…好きなだけじゃ、どうしようもない恋だって…。 私、…知ってたのに。 美鈴が恋の為に、…身体も心も、傷付いていたこと…。 なのに、…あ、あんなことになるまで、…私、何も出来なかった…!!」 自分に憤りを感じて、……悔しくて、ボロボロと涙を流して泣いた。 ――美鈴は恐らく、退学になる。 例え、あの写真が合成か何かで偽装されたものであったとしても、……それくらい、あの学園は厳しいのだ。 完璧なお嬢様の見本で常に優等生の。 そんな道を歩いてきた美鈴の足元が、ガラガラと崩れていく。 ……恋が、美鈴を変えたの……? すすり泣く私の髪を、高雄が優しく撫でる。 「……ごめん」 「……なんで、高雄が謝るの…?」 「お嬢が泣いてるのに、何も出来ない。 お嬢が悲しむ状況を、避けられなかった」 「……」 「お嬢が笑っていられるために、俺は側にいるのに……」 「……たかお……」 「…お嬢が大切にしてる、友達の変化に気付いてやれなくて。 …本当にごめんな…」 「……っ」 その哀しみを含んだ声に、私は我慢出来なくなって。 うえーん、と、小さな頃みたいに、声を上げて、泣いた。
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