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私を部屋に招き入れ、美鈴はラグの上に置かれたクッションに座った。
「…ぶたれたの?」
「……。
最初は、泣き叫んで私を罵倒することを言ってただけなんだけど……。
だんだん、感情が高ぶってきたみたいで。
平手打ちから始まって、最後は馬乗りになってゲンコツよ」
「……」
「…さすがに、お手伝いさんが止めに入ってくれたけど…。
それからはもう、部屋から出てこないのよ。 お母さん」
「…美鈴…」
「お父さんなんて顔も合わせてくれないの。
…まあ、分かってたことだけど」
大人びた表情をしながら、美鈴は視線を床に落とした。
私は美鈴の前に力なく座り込み、必死に言葉を選び出そうとする。
だけど、…はがゆい。
聞きたいことは沢山あるはずなのに……、どうやって紡いでいけばいいのか、分からない。
「…あの、…美鈴」
顔を上げると、美鈴は、私をじっと見つめていて。
そして、穏やかな微笑みを浮かべて、
「あの写真は、…本当なの」
はっきりと、そう言った。
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