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「…ほ、本当って……」
「合成でもヤラセでもなく、本物。
あれに写ってたのは、紛れもなく、私よ」
「…美鈴…」
「ちなみに」
愕然とする私に、美鈴は穏やかに微笑みながら、言った。
「私が頼んで、写真を撮らせたの。
いかにも隠し撮りみたいに、だけどしっかり顔を写るようにして、って。
……それから、写真を貼り出したのも、…私」
――一瞬、目の前が霞んだ気がした。
目の前にいる幼馴染みが、…ひどく遠くに感じられる。
まるで、知らない人みたいに。
「……な、んで……」
「……」
「…なんで、…そんなこと……」
声が掠れて、上手く言葉が出てこない。
美鈴はゆっくり立ち上がると、部屋に備え付けてある小さな冷蔵庫からペットボトルのレモンティーを取り出し、それを私にそっと握らせた。
“落ち着いてね”とでも、言うように。
「分からない。 …でも。
…壊したかったのかも、知れないな」
「……。 壊したい……?」
「……昔から、頑張ってきたの。
母や周りから、認められたくて。
跡取りのお嬢様であることを、…必死で、頑張ったの。
そのまま、周りの期待通りに、…言われるまま、生きていければ良かったのに。
……でも、人形が意思を持っちゃ、ダメね」
「……」
「初めて自分から欲しがったものが、…手に入らないって分かったとき…。
ずっと言いなりになってきた人形には、…この悲しみをどうすればいいのか、分からないの。
だったら、…全部、壊そうと思った。
私を造るもの全てを、この手で」
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