私を造る全てのものを、この手で。

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「……そんな……」 泣き出しそうな声を出した私と、ひどく冷静な美鈴の横顔。 美鈴はゆっくりと私を見遣り、ふっ……と、口元を緩めた。 「…私、好きな人がいるって言ったよね」 「……」 私はただ、コクリと頷く。 「彼はね、…大人で。 私とどこか一線を置くようにして付き合う人で。 それがすごく寂しくて、…私が子供だからかなって、思ってた」 「……」 「彼じゃないとダメだって。 彼にならどうされてもいいって、言ってるのに……。 絶対、“最後”までしてくれないの」 その“最後まで”の意味が分からないほど、疎くはない。 私が口を挟まないと知っているかのように、美鈴は、続ける。 「…例え、どんな理由があっても、……私は、彼になら、壊されたって構わない。 だから、色んなことをして、身体に残したわ。 ……彼が触れた、痕を」 太ももの歯形のアザに、首を絞められたような痕。 それらを思い出して、私は、…震えた。 だってそれは、…恐ろしいのを越えて。 ただただ、……悲しかった。 「凛々がうちに来てくれた、…あの雨の日。 壊れそうになりながら、…抱いて欲しいって、言ったの。 ……だけど、彼が私を抱くことは、出来なかった」 なぜ、と。 美鈴がどんな人に恋をしていたのかなんて、知らない。 だけどなぜ、美鈴がこんなことになる前に―――彼女の想いを、受け止めてあげなかったの、と。 責めたいような、憤りを感じずには、いられなくなって。 「……っ、美鈴……」 「でも」 私の声を遮って、美鈴は、…耳を塞ぎたくなるような言葉を落とした。 「案外、あっけないものだったわ。 セックスなんて」
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