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ふわり、美鈴の柔らかいウェーブヘアが、揺れた。
喉が張り付いたように声すら出せなくなった私を見て、彼女は口元に弧を描く。
「すごくお手軽で簡単だった。
パソコンでその手のサイトにアクセスして、掲示板に書き込んで。
面白いくらい、たくさん返事が来て。
適当に選んだ相手に、お金なんていらないから、代わりに写真を撮っていいか聞いてみたら…」
美鈴が、くすくすと笑う。
「“ホテルに入る写真だけじゃなく、ヤッてるとこビデオ撮影してもいいよ”だって。
それが出回ってもいいなんて、世の中可笑しな人ばかりね」
しばらく笑いを溢していた美鈴は、ぼんやりと宙を見つめ、
「ホテルに入ったら、すぐ、よ。
脱がされたと思ったら、触られて、身体中全部、食べ物みたいに舐められた。
気付いたら、下半身が痛くて。
…ギチギチって、振動がくるたび、痛くて。
我慢して我慢して、……そしたら男が、満足そうに震えたの。
…セックスなんて、そんなものだった」
「……や、やめて……」
堪らず嘆いて、俯いて頭を振った。
だけど美鈴はそんなのお構いなしに、続ける。
「気持ちいいなんてのはもちろんなくて、……それどころか、罪悪感すら、なくて。
ただ、私の中を往き来するのがセックスなんだって……。
誰とでも、出来るんだって……。
あんなに“抱いて”ってこだわっていたのが、こんなことだったんだって、思った」
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