私を造る全てのものを、この手で。

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感情のない目をした美鈴は、ふっと物憂げに、こっちを見る。 「そう思ったらね、全部が何でもないような気がしたの。 私が今まで必死になって守ってきたもの、何もかもが。 …だから、壊した。 それだけよ」 「……美鈴……」 「ねぇ、凛々。 凛々の友達の言葉を借りれば、禁断の恋、っていうのかな。 …好きなだけじゃどうしようもない恋も、あるんだよ」 「……」 「抱かれれば、何かが変わる。 だけどそんなの、理想や思い込みに過ぎなかった。 どんなに身体が近くにいても、…どうしても結ばれない人は、いる」 ――それを聞いて、私は、高雄を思い出す。 どうしても、結ばれない。 どんなに好きでも。 …例え、抱いてくれたとしても。 「二人の道が、交わらない。 凛々は、そんな人を、好きになっちゃ……ダメだよ」 美鈴はいつの間にか、腫れた頬に幾重にも涙の跡をつけていて。 私もいつの間にか、静かに泣いていた。 「…知っていて欲しかったの」 「美鈴……」 「誰にも言えないような恋だったけど、…こんな終わりをしたけど。 だけど、誰かに、知ってもらいたかった。 …私、ただ、彼が好きだっただけよ」 「…っ、みすず……っ」 「…好きになった、だけなの…っ」 掠れた声で叫ぶと、美鈴は、弾けたように自分自身を抱き締めながら、泣いた。 私は、ただ、悲しくて。 美鈴の身体を守るように抱きすくめて。 嗚咽が零れないようにと、唇を強く噛み締めていた。
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