私を造る全てのものを、この手で。

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「……お嬢…?」 「……。 仕事、なの……?」 「……」 少しだけ、黙って。 高雄は眉をキュッと寄せ、口を開いた。 「……いや。 別件だよ。 でも、急ぎで――」 「峰岸先生に会いに行くの?」 「……お嬢……」 どうしよう。 どうしよう、止まらない。 これ以上はダメだって、頭の中で警告音が鳴っている。 高雄は困ったように、だけど険しい顔をした。 「蒸し返すな。 峰岸先生とは何でもないって――」 「だったら。 ……今日は、行かないで」 「……」 「…一人に、しないでよ…」 唇を噛んで、俯く。 すると、スッと影が降りてきて。 高雄が苦しそうな顔をして、私を覗き込む。 「……お嬢……」 「……」 「今日は、帰って来るから。 …3時間、いや、2時間だけ。 少しだけ、我慢して…」 「……っ、…やだ…」 「お嬢……」 ふるふると頭を振る。 小さい頃、駄々をこねたみたいに。 高雄が、困ってる。 困らせたいわけじゃないのに。 ――だけど、こんな日くらい。 甘い香りの誰かより、私を、選んでほしかった。
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