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「…なんで…?」
「お嬢…」
「なんで? 今日じゃないとダメなの?
私、今日だけは……一人になりたくないよ…」
「……」
高雄が、苦しそうに。
私に手を伸ばしながら、何か言おうと口を開いたとき。
――携帯の着信音が、それを遮った。
「…高雄……」
きっと、催促の電話。
私にも高雄にも、それは分かっていた。
「……っ」
「………」
高雄が手にしているジャケットの中から、鳴り続ける音。
最終警告。
「……たかお……」
すがるように、涙をポロポロ流しながら見上げる。
高雄は、唇を噛んで、スッと目を逸らした。
音はまだ、鳴っている。
「―――ごめん」
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