パンドラの箱を開けるとき

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多分、車に揺られていたのは20分くらい。 ゆっくりと停車したのを感じて、俯いていた顔を上げた。 「……ここは……?」 ふっ、と、車のライトが消されて、辺りが暗くなる。 細い路地。 点々と電柱の古びた外灯がついていて、真っ直ぐ先に見えたのは、校門のような入り口だった。 「…あれは、学校…?」 「学校じゃないよ。 施設だ」 「…施設…」 幼稚園くらいの規模の建物。 鉄で出来た門の横には、『ひまわり園』と書かれているのが、なんとか読めた。 「ここが、加賀が育った場所だ」 「………」 ここが……。 じっと、その入り口を見つめる。 高雄が、育った場所。 私の知らない、高雄の歴史が詰まってる場所―――。 『あの二人の歴史は、長いよ』 ふいに、その言葉がフラッシュバックして。 そして、そのタイミングを、――向上先生は見逃すはずがない。 「あの入り口の横手に、勝手口がある」 「……」 「施設長は、峰岸光一だと言ったよね? 要するに、ここは、…峰岸先生の自宅でもあるわけだ」 「…っ……」 予想は、していたけど。 それでも、ぐっと胸が痛む。 『峰岸先生に会うために、夜、出掛けてなんてない』 ―――…嘘つき。 「……高雄は、……」 「うん……」 「…本当に、ここにいるの…?」 向上先生が、シートにもたれたのが、音で分かった。 「いるよ」
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